最近は日本の大学レベルを懸念して海外の大学や大学院に優秀な学生が移動しているという話をよく聞きます。
本当に日本の大学の教育力は低下しているのでしょうか?
私の意見としては、残念ながら日本の大学の教育力は低下していると思います。
何年も前から日本の教育は「詰め込み教育」だとか「偏差値主義」だとか言われています。科目によって詰め込み教育になったり、ある程度偏差値を重視するのは悪いこととは思いませんが、度が過ぎているのが日本の教育であると思います。それ故に自分で考え行動し、リーダーシップを発揮する経験をしないまま社会人になる若者が増えていると感じます。
私の経験上、危機感を持っている学生の懸念は2つ。
(1)企業が求めるスキルを大学で習得できずいい職に就けないこと。
(2)企業に評価されない大学を卒業していい職に就けないこと。
そのため、優秀な学生は少しでもいい企業に就職するため、企業が求めるスキルを習得でき尚且つ大学ランキングの高い大学(特に大学院)を目指して海外へと移動しているのが現状です。
元ゴールドマン・サックスアナリストで『日本人の勝算』の著者のアトキンソン・デービッド氏は、『日本人の「教育改革論」がいつも的外れなワケ』(東洋経済オンライン)の記事で、日本のリーダー教育の遅れを指摘しています。
“日本の教育は、言われたことを忠実に守る、いわば兵隊を作ることに関しては、すばらしい成績を出していますが、リーダー教育は非常に遅れています。”
『日本人の「教育改革論」がいつも的外れなワケ』東洋経済オンライン
同氏はまた、ビジネスパーソンが生産性を高めるには大学以上の教育が重要にも関わらず、日本の高等教育の評価は下がってきているとも指摘しています。
“教育のレベルと生産性の相関を測ると、先進国になればなるほど、とくに大学以上の評価と生産性の水準の相関が強くなります。当たり前といえば当たり前の話なのですが、日本ではほとんど意識されていないのも事実です。”
『日本人の「教育改革論」がいつも的外れなワケ』東洋経済オンライン
“日本の教育のうち、幼児教育は世界的にも高く評価されています。一方、高校、大学と高等教育になればなるほど評価が下がっているのが現実です。World Economic Forumの評価では、基礎教育は世界第7位ですが、高等教育以上のランキングは第23位まで下がります。”
『日本人の「教育改革論」がいつも的外れなワケ』東洋経済オンライン
また、イギリスの高等教育評価機関、クアクアレリ・シモンズ社(以下、QS)は今年2月に発表した『2019年版 科目別QS世界大学ランキング』の結果はとても興味深いです。
“トップ20位入りした日本の大学数は、中国勢・香港勢に抜かれ、前年度アジア2位から4位となりました。”
『2019年版 科目別QS世界大学ランキング』クアクアレリ・シモンズ社
また、同ランキングは、4つの指標に基づきランク付けされており、これらの分野で海外の大学と比べ日本は相対的に影響力が下がっていることが分かります。
“評価方法としては、以下の4つの指標を採用しています。
1.学術関係者からの評判:世界の学術コミュニティからどの程度高く評価されているのか?
2.雇用主からの評判:雇用主はどの程度その大学の卒業生を高く評価しているのか?
3.論文の引用:教授陣の論文はどの程度影響力があるのか?
4.H指数:学者、研究者の生産性と影響力はどのくらいあるのか?“
『2019年版 科目別QS世界大学ランキング』クアクアレリ・シモンズ社
以上の通り、日本の大学について議論すると教育力が下がっている材料ばかりが目立ってしまうように思います。
日本が国際的にも競争力をもっていくには、大学の教育改革を進め、優秀な人材が日本の大学で学びたいと思えるような制度にしていくこと。そのためには、リーダー教育など企業が求める人材を育てるカリキュラムにすること、そして、大学ランキングを意識した大学内の組織戦略や人事戦略を進めていくことではないでしょうか。
参考:
『日本人の「教育改革論」がいつも的外れなワケ』東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/273079
『2019年版 科目別QS世界大学ランキング』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000020963.html